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技術情報

合板の強さ

建築物の安全性に関わる基準と
合板の強度

木造建築への合板の利用について、安全性の基準の考え方やその構造計算の実際、さらに従来の筋かいと合板の「耐力壁」比較など、合板の強度に関する技術情報です。

構造用合板を利用した具体的な設計、施工方法については「構造用合板の手引き」(日本合板工業組合連合会発行)をご覧ください。

1建築物の安全性の基準

建築基準法では、木造であっても「一定規模を超える建築物」(※1)については、「構造計算」(※2)を行い確認申請時には構造計算書を提出する必要があります。
それ以外の2階建て木造住宅など(「4号建築物」)は、建築基準法施行令等で定める構造に関する「仕様規定」(※3)に基づいて構造上の安全性を確認することができます。

※1「一定規模を超える建築物」とは
①階数が3以上 ②延べ面積が500㎡を超える ③高さが13mを超える、または軒高が9mを超える
のいずれかに該当する建築物です。
※2「構造計算」とは
荷重・外力に基づいた許容応力度計算等のことです。一言で言えば、建築設計する建築物の各構造部材に加わる複数の荷重に対し、部材の安全性を確認する高度な計算です。
※3「仕様規定」とは
木造住宅の仕様規定には、次のとおり3つの簡易な計算と8つの仕様ルールがあります。
※ここでいう3つの簡易な計算は、「構造計算」(許容応力度計算等)ではありません。
(1)壁量の確保(壁量計算)
地震力および風圧力に対する耐力壁の必要壁量を求め、それ以上の壁量となるよう存在壁量を計画することです。
  • 存在壁量:計画している木造住宅に実際ある耐力壁から算出される壁量
  •       (計画されている木造住宅が有する壁量)
  • 必要壁量:建築基準法施行令の基準に従って算出する最低限必要とされる壁量
  • 判定のルール:地震時の必要壁量、暴風時の必要壁量のうち大きい壁量≦存在壁量
(2)壁配置のバランス(四分割法)
存在壁量が必要壁量を満たしていても、各耐力壁をバランス良く配置しなければ建物の安全は確保されません。四分割法は、耐力壁の配置が平面上バランスよく計画されていることを確認することです。
(3)柱の柱頭・柱脚の接合方法(N値計算法)
地震などの水平荷重が作用するとき、耐力壁の両端の柱の柱頭・柱脚のなかには大きな引き抜き力が発生する場合があります。この接合部分での引き抜き力による柱の引き抜きを防ぐために必要となる補強方法を確認することです。
(4)基礎の仕様
(5)屋根ふき材等の緊結
(6)土台と基礎の緊結
(7)柱の小径等
(8)横架材の欠込み
(9)筋かいの仕様
(10)火打材等の設置
(11)部材の品質と耐久性の確認

2耐力壁(構造用合板や筋かいなど)の壁倍率

ここでは、「一定の規模を超える建築物」以外の2階建て木造住宅など(「4号建築物」)でも適用される「仕様規定」で用いる耐力壁の壁倍率について説明します。
仕様規定では、地震力および風圧力に対する耐力壁の必要壁量(仕様規定で定められた最低限必要な耐力壁の量)を求め、計画している木造住宅等が有する「存在壁量」がその必要壁量を上回るようにしなければなりません。
存在壁量を算出する際の基礎数値となるのが、各耐力壁の壁倍率であり、壁倍率の総和である存在壁量とは、建築物の壁が地震力や台風などによる風圧力に対して、どれだけ耐えうるのかを客観的に数量評価したものです。
仮に、同じ存在壁量であっても、倍率の大きい耐力壁を使用することにより、耐力壁の枚数を減らすことが可能となったり、間仕切り壁を減らしたり、開口部を増やすなど設計の自由度を広げることができます。
構造用合板の壁倍率については、以下のとおり「国土交通省告示」や「国土交通大臣認定」に基づき周知されています。


国土交通省告示による倍率(木造軸組構法の耐力壁の壁倍率)

国土交通省告示による倍率(木造軸組構法の耐力壁の壁倍率)

倍率 材料 接合方法
種類 厚さまたは断面(mm) 釘の種類 間隔(mm)
3.7 構造用合板、化粧ばり構造用合板(大壁) 9以上 CN50 外周部@75以下、その他@150以下
構造用合板、化粧ばり構造用合板(大壁床勝ち)
3.3 構造用合板、化粧ばり構造用合板(受材真壁) 9以上 CN50 外周部@75以下、その他@150以下
構造用合板、化粧ばり構造用合板(受材真壁床勝ち)
2.5 構造用合板、化粧ばり構造用合板(大壁) 7.5以上 N50 @150以下
構造用合板、化粧ばり構造用合板(大壁床勝ち)
構造用合板、化粧ばり構造用合板(受材真壁)
構造用合板、化粧ばり構造用合板(受材真壁床勝ち)
1.5 構造用合板、化粧ばり構造用合板(貫真壁) 7.5以上 N50 @150以下

※青色部分は、平成30年の国土交通省告示により、釘の種類や間隔を変えた高倍率耐力壁の仕様として追加されたものです。

国土交通省告示による倍率(枠組壁工法の耐力壁の壁倍率)

国土交通省告示による倍率(枠組壁工法の耐力壁の壁倍率)

倍率 材料 接合方法
種類 厚さ(mm) 釘の種類 間隔(mm)
4.8 構造用合板、化粧ばり構造用合板 12以上 CN65, CNZ65 外周部@50以下、その他@200以下
4.5 構造用合板、化粧ばり構造用合板 12以上 CN65, CNZ65 外周部@75以下、その他@200以下
3.7 構造用合板、化粧ばり構造用合板 9以上 CN50, CNZ50 外周部@50以下、その他@200以下
3.6 構造用合板、化粧ばり構造用合板 12以上 CN65, CNZ65 外周部@100以下、その他@200以下
3.5 構造用合板1級 9以上 CN50, CNZ50, BN50 外周部@100以下、その他@200以下
3.0 構造用合板1級 7.5以上 9未満 CN50, CNZ50, BN50 外周部@100以下、その他@200以下
構造用合板2級、化粧ばり構造用合板 9以上
2.5 構造用合板2級、化粧ばり構造用合板 7.5以上 9未満 CN50, CNZ50, BN50 外周部@100以下、その他@200以下

※青色部分は、平成30年の国土交通省告示により、釘の種類や間隔を変えた高倍率耐力壁の仕様として追加されたものです。

国土交通大臣認定による倍率(日新が、個別に国土交通大臣の認定を受けたものです)

名称:日新プレミアム構造用合板

工法 厚さ プライ数 樹種 等級 倍率 仕様 主な施工場所 モジュール 釘打ちの方法 認定番号
設定日
長さ 種類 間隔
軸組 9mm 5 全層米松
(ダグラスファー)
2級
以上
5.0 大壁
(壁勝ち)
外壁 910mm以上1000mm以下 2430mm以上3030mm以下 CN65 外周75mm以下/中通り150mm以下 FRM-0686
(令和2年7月13日付け)

(株)日新 NS木質科学研究所
   TEL:0859-47-0606 FAX:0859-47-0707
   E-Mail:ins@nisshin.gr.jp

商品に関するお問い合わせ
(株)日新 営業部
   TEL:0859-47-0303 FAX:0859-47-0313

国土交通大臣認定による倍率(日本合板工業組合連合会等が、個別に国土交通大臣の認定を受けたものです)

国土交通大臣認定による倍率

工法 厚さ
(mm)
等級 倍率 仕様 主な施工場所 モジュール 釘打ちの方法 認定番号
910 1000 種類※2 間隔
軸組 12 2級
以上
4.0 大壁 外壁 CN65 外周100mm以下/中通り200mm以下 FRM-0335
3.8 CN50 外周75mm以下/中通り200mm以下 FRM-0416
3.1 CN50 外周100mm以下/中通り200mm以下 FRM-0415
3.6 大壁床勝ち 外壁・間仕切り壁 CN65 外周100mm以下/中通り200mm以下 FRM-0334
3.6 CN50 外周75mm以下/中通り200mm以下 FRM-0414
3.2 CN50 外周100mm以下/中通り200mm以下 FRM-0336
3.4 受材真壁 外壁 × CN50 外周100mm以下/中通り200mm以下 FRM-0337
4.0 受材真壁床勝ち 外壁・間仕切り壁 × CN65 外周100mm以下/中通り200mm以下 FRM-0339
3.5 × CN50 外周100mm以下/中通り200mm以下 FRM-0338
3.6 × CN65 外周100mm以下/中通り200mm以下 FRM-0483
24※1 2級
以上
5.0 大壁 外壁 CN75 外周100mm以下 FRM-0297
大壁床勝ち 外壁・間仕切り壁 CN75 外周100mm以下 FRM-0296
受材真壁 外壁 CN75 外周100mm以下 FRM-0298
受材真壁床勝ち 外壁・間仕切り壁 CN75 外周100mm以下
枠組 12 2級
以上
5.0 枠組壁 外壁・間仕切り壁 CN65 外周50mm以下/中通り200mm以下 TBFC-0114
4.8 CN50 外周50mm以下/中通り200mm以下 TBFC-0112
4.5 CN65 外周75mm以下/中通り200mm以下 TBFC-0111
3.6 CN65 外周100mm以下/中通り200mm以下 TBFC-0113
9以上
10未満
2級 1.5 枠組壁・横張り 外壁・間仕切り壁 CN50 外周100mm以下/中通り200mm以下 TBFC-9034

※1 商品名:ネダノン スタッドレス5+
※2 CNZ釘も使用

〈認定書請求先〉
・軸組 12mm 枠組 12mm:日合連(ホームページから認定書のコピーの申請用紙が入手可能です)
・軸組 24mm(ネダノン スタッドレス5+):東京・東北工組(ホームページから認定書のコピーの申請用紙が入手可能です)
・枠組 9mm以上 10mm未満:(一社)日本ツーバイフォー建築協会(ただし、認定書の発行には会員登録が必要となります)

3「合板張り耐力壁」と「筋かい耐力壁」との違い

合板張り耐力壁は、引張や圧縮に対して同等に抵抗します

筋かい耐力壁は、基本的に図1のように圧縮の力を受けたときには、筋かいの端部が土台・柱・胴差しなどに接することによって、抵抗します。
一方、筋かいが引張の力を受けたときには、筋かい端部は、土台・柱・胴差しから離れようとするため、十分に抵抗できません。そのため、筋かい端部は土台・柱・胴差しから離れないようにするため、金物で補強することになっていますが、それでも耐力は圧縮の時の半分程度です。
以上のような理由から、筋かい耐力壁は、同一耐力壁線上で、筋かいの方向が一対の配置となるようにしています。
これに対して、合板張り耐力壁には方向性がなく、引張・圧縮の両方の力に同等に抵抗できるため、筋かい耐力壁と比べて、自由に配置できます。

合板張り耐力壁は、施工の精度に左右されません

一対の筋かい耐力壁に、繰り返し荷重をかけると図2のように、荷重がゼロの付近で容易に変形するスリップ成分が見られます。これは、筋かいの端部が土台・柱・胴差しなどに接するまでに生じる瞬間的な隙間によるものです。
これに対して合板張り耐力壁は、初期剛性が高く、筋かい耐力壁のようなスリップ成分は見られません。
筋かい耐力壁の初期のスリップ成分は、金物補強により減少させることはできますが、端部の隙間は施工精度に依存し、その影響を完全になくすことは困難です。
一方、合板張り耐力壁は、釘打ち仕様(釘の種類、間隔等)を遵守すれば、初期剛性の高い安定した能力が容易に得られる耐力壁です。

合板張り耐力壁は、力が分散するので粘りがあります

筋かい耐力壁は、筋かい自身とその接合部に大きな力が集中する構造となっているため、場合によっては筋かいの端部が離れたり、筋かいが折れるなど、脆性的な破壊を生じることがあります。
これに対して、合板張り耐力壁では、合板と軸組との力の伝達が、多数の釘を介して行われるため力が集中せず、粘り強い構造となっています。

出典:日本合板工業組合連合会発行「構造用合板の手引き」P.23 P.24